さし迫るヨーロッパの金融危機に対して日本と日本人にどう対応するか

岩田 年浩

日本の国レベルで、一企業や家計レベルで危機を事前に軽減する必要があります(エコノミック リスクマネジメント)
―7月6日~10日のドイツへの視察で得た現地情報をプラスして報告しますー


① 共通通貨の危険: もっての外の鳩山元首相の「東アジア共同体構想」・・・ヨーロッパでの身動きがとれない各国の政策が示している
② 日本の不況: ギリシアはユーロに残る方向なので、円安への逆転(日本の輸出増加)は夢。EUはギリシアのユーロ離脱をさせないように、ソフトランディングの基本方針にある。その場合でも、単純に輸出が増えるとはならない。ヨーロッパの大混乱で日本の輸出難の反作用もあることがよく忘れられている
③ 日本銀行の役割: 経済情報を最も深く細かく集めて対応しているのは日銀であり、日常、私たちはその恩恵を受けていることを知っておくべき
④ 日本の景気について: アメリカの好況不況の予測の中で、アメリカよりも不況期が長く好況期が短い中で、外国からの金融ショックに弱い国であることを知って、予測を先取りした(企業も家計も赤字を縮小する)対策を用意しておくこと
⑤ 為替リスクに対して: 大手企業は金融資産を常に円・ドル・ユーロの3つで保有しておく必要がある。日本企業の多国籍化の加速こそ今すべきこと
⑥ イランによるホルムズ海峡の封鎖や原発事故の心配に対して、エネルギーバランスの変化をビジネスライクに進めるべき
⑦ 消費税がアップしてしまうと: 
   経済政策としては、国家予算に上限をもうけないと借金は累増していくほかない(全ての不安の震源)
ミクロの経済では、ガソリン価格上昇の時も地デジ対応テレビの時も、その前後で
の駆け込み需要とその後の需要の急減が常にあったことを今から思い返して、個人も企業も今から生産・注文・雇用・支出の調整行動を計画すべき
⑧ 個人の資産運用: 「不時の金」と人民元に価値上昇の可能性大。今日の債券安と円高の状態では、豊かなキャッシュフローを持つ企業や円高で恩恵を受ける企業の株を買う



1 ギリシア危機の状況

 危機は2009年末から2010年初に表面化
債務残高/GDPは120%に ギリシアでは雇用者の約30%が公務員
 ギリシアの大統領は  バブリアス
      財務大臣は ストゥルナラス教授
 2月 第二次金融支援1300億ユーロ(14兆円)ECBが1兆ユーロ(108兆円)を超える低利の3年物資金を供給して一服感
 EU内で銀行同盟の結成・・・政府と銀行の関連を断つことになる 財政と金融政策は別々に 各国では通貨増発はもちろんできない 
 6月30日 財政危機の国の銀行へ資本の直接注入を決定・・・こうすると当面スペインやイタリアの国債金利は低下する・各国の株価の上昇
しかし、ポルトガルやアイルランドではEUの要求を受け入れて借金の棒引きはみとめられなかった

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2 現在のようなユーロ安になると

  ドイツの輸出産業は好調
ギリシアのユーロ離脱なら(まず、ギリシア国内で銀行の取り付け騒ぎが発生 そしてPIIGSの離脱ドミノが生じる)はユーロ高円安で日本は助かる 輸出増
ギリシアがユーロを離脱しない場合は通貨の切り下げ・ドラクマの復活・デフォルトに向かう しかし、対外債務はユーロで残る
・・・1997~98年のアジア危機の時はタイ・インドネシア・韓国が通貨を大幅に切り下げて対策をうった ギリシアがユーロに残る限りこれらはない


3 国債や社債の価格と金利

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好況期 海外進出でドル買い=円高
     国債など借金の増加による政府支出の増加 → 結局国民の金融資産の増
     投資支出の増加 → 資金需要の増加のため手持ちの国債を売る 
                  資金は株式市場へ向かう

     つまり、好況期には負債が増加する必然がある

債券価格の下落=債券利回りの上昇 これが呼び水となり国債への需要が増えるが、企業の資金調達は難しい状況
 しかし、国家の信用が低下した場合も国債は買われないので(暴落 国債は一定金利なのでさらに値下がりする)、資金は預貯金へ向かう
 日本国債の格下げ(S&Pでは、AA-)
 日本国債に対する需要も他の金融商品との比較の中でなされる
 不況期には国債や社債は株式や投資信託に比べて投資資金がマイナスになる確率が低いので人気
 当然だが、国債の利回りは短期2年債よりも中期5年債、さらに長期10年債の方が高くなっている(これを「順イールド」と呼ぶ) ギリシア国債は資金回収率が35%と予想されており、額面が保障されないので「逆イールド」になっている




4 日本財政のピンチ 国の借金(国債・借入金・政府の短期証券)は年内に1085兆円になる(GDP比約200%)

 日本国債の95%が円建て
 もし日銀がこれを引き受けざるをえなくなれば危機感が広がる
 日本の財政危機が生じた場合は長期金利は10%を超えることになる
 しかし、日本の外貨準備高は1兆3000億ドルと世界第二位の水準でこれも世界からの信頼を受ける一つになっている(つまり、国レベルでのキャッシュフローがあるということ) 政府部門の借金は1001兆円で481兆円の政府資産がよく取りざたされ、危機説が吹聴されるが、政府部門以外の資産は5000兆円を超えている事実

基礎知識

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 EU 加盟27カ国 (内、ユーロを使わないのはイギリス、スウェーデン、東欧の旧社会主義国など11カ国)
(大統領はファンロンパイ)のビル群 ベルギーの地下鉄シューマン駅前
  ECB
  ERM
  ESM

ストレステスト
銀行の健全性テスト
デュレーション
継続期間、持続時間の意》債券投資で元本を回収するまでに必要な平均残存期間のこと。また、金利が変動した場合、債券価格がどの程度変化するかを表す指標の一種。この値が大きいほど金利の変動による債券価格の変動率が大きくなる

 М.フリードマンは「世界が最大の難題に直面する時、ユーロは崩壊する ユーロの寿命は15年」と語った


 雑メモ
ドイツ:夏は夜の10時まで明るい(逆に冬は昼が短い)、湿度が低くクーラーはない、塩辛い食べ物が多い(味付けに凝るフランス料理と異なる)、肉は豚肉が主、アルコール類はビールとワイン、自転車を列車に積み込むことができる、他国での建物の一階をグランドフロアーと呼び、二階を一階と呼ぶ、40歳未満の人はほとんど英語が話せる、チップの習慣はない、フランクフルトには棒がさしてない、石造りの中世の建物が残っている、メルケル首相の評価は定着している、黒人がイギリスやフランスほどには目立たない(かって、アフリカての植民地が少なかったことによる)、マルクスの生家がトリーアニあるが日本社会ほど異端視する様子はない(一哲学者としての評価)、保守系の人たちをふくめてヒットラーの評価は低いがドイツこそヨーロッパの伝統的中心という自負がある






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