【政治評論】ここで、橋下徹氏はどう出るか

H25(2013).05.21 岩田 年浩


当初の橋下人気が引きつける力は必ずしも保守一辺倒のものではなかった。 官僚の不正や公務での無駄遣い批判には市民の(既存の政治家にはない完成や発言力と相まって)期待は高まった。 大震災後の原発に反対する言動も期待を集めた。まさに、「将になる器」と思われたのである。

しかし、続く民主党政権のもとでの鬱積した政治状況と景気の低迷が慢性化している状態だからこそ、橋下氏は類いまれな人気を集めた。 この時期こそ、天の時・地の利・人の和がそろった時はなかったのである。 その意味では、彼は日本社会の低迷きわまれる時期の申し子だったのである。 今や、国民の期待はおおむね自民党と公明党政治に向けられている。 間髪入れずに景気の浮揚に向かう安倍政権は凄みさえある。 これは橋下氏にはなしえないことで、しかも政治の世界は弁護士という自由業での発言や行動とは大きく体質を異にしている。 人脈の広さ深さや渦巻く陰謀と駆け引きの独特の政界の体質は彼の馴染めないものだったと言える。 人脈や経験の多様な石原慎太郎氏との共同歩調は彼の直ぐにはなしえない政治家としての制約が然からしめたこと言えよう。 彼のもどかしさは維新の会に期待された状態よりも低い衆議員議員選挙の結果として表れた。 昨年のあの選挙直後からの顔相(笑顔が減り、記者に逆切れするような余裕のない冷たい怒り顔へ)の変化はそれを物語っている。

また、(関電の株主総会に向けての原発反対の姿勢の腰砕け、職員の挙動調査の反省と復活、ぶら下がり取材の取り止めと再開など)言を左右する癖も民衆の不信を作っていった。 こうした状態を醸成していったことの根本は、取り巻く各界の人物の中に彼にイデオロギーを超えた高級な政治家としての哲学や帝王学を説く人がいなかったということにもある。 あれだけ気の強い橋下氏もまた、イエスマンで囲まれようとする古い体質の持ち主だったと言えよう。 なお、エネルギーバランスの課題は当面、原発が地震・津波に十分耐えられるという前提の上で現実から出発して考えるべきであろう。

その結末が今回の米軍と戦時下の日本についての彼の大失言と激しいバッシングと言えよう。

その橋下氏のもつ生まれつきの特徴はその場での激しい論戦が得意で、一気に状況を一変させる潜在的能力を持っていることだ。

もし、今回の問題についての論戦に彼が挑むとすれば、その相手はアメリカと米軍となる。 これはどんな政治家にとっても極めて危険な的であるが、彼の言う論理と証拠(どの戦時下でも略奪・強姦は必然のようにともなっていることも)を周到に用意して、 さらに最後には相手に退路を与えての打って出る論戦しか活路はないと思われる。 これが成功する確率は低いがゼロではない。彼にとっては、こうした自爆的な賭けに出るしかないのではないかと助言しておこう。

平成25年(2013)5月21日

(京都経済短期大学学長 岩田 年浩)

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